ダブル
銀時と桂は毛布の取り合いをしていた。
「ああーもう、おまえは!毛布ひっぱんなっつってんだろ!」
「なにおう!今晩は冷え込んでいるんだ、おれだって寒い!」
お互いを温めあおうという発想は元より二人の頭にはない。
「そもそも一人分なんだから無理があるんだよ、ヅラぁ、てめーは客らしく遠慮して居間のソファーで丸まって寝てろコラァ!!」
「何だと!貴様さっき俺に抱きついて、延々とチョメチョメして喘いでいた分際で何を言う!」
「ばっ、バカかおめーは!何恥ずかしーこと大きい声で言ってんだ!だいたい抱きついて喘いでいたのはヅラのほうだろーが!間違えんな、バーカバーカ!!」
「チョメってたのはお互い様だろう!用が済んだら布団から出ていけとは、何て薄情なヤツだ!!俺の寝顔を見届けてから眠ろうという器のでかさはないのか!」
「あるわけねーだろ、ボケッ!!もっとさー可愛くおねだりっていうの?頬染めて『銀時…寒いから一緒に寝ていい?』とか言えない?こういう感じでさ、」
枕を抱きしめながら顔を斜めにかしげて、上目づかいの仕草をする。
「………銀時、キモイ」スパッと言い放った。
「うわあああああ!!!俺だって恥ずかしいんだよ、バカ!もうやだ、ほんと出てってくれよ!頼むから!!」
「………ならば。」
一呼吸置いた桂は大胆な行動に出た。
「お、ソファーで寝る気になったか」
「違う。リーダーと同衾させて貰う」
「なっ…同衾…だとぉおおお!!!!」 さすがに銀時も動揺を隠せない。
「フン、もう遅いわ」桂は得意気な表情になる。
「まっ、おまっ、ちょっ待っ、」
「何を慌ててるんだ。」
「ヤバいだろ、ヤバいだろ!さすがにそれは!いい年したオッサンが年頃の娘と同じ布団で寝るなんてよ」
「入らぬ心配だ。俺はロリコンではない。子供に興味はない」
スタスタと押し入れに向かう桂。追いすがる銀時。
「そういう問題じゃないっての!」
「じゃあなんだ。妬いてるのか、ん?」
「ち、ちげーよ、モラルの問題だよ!あいつのオヤジが許しても俺は許さないっての!万が一のことでもあっちゃ困るんだよ!」
「…そうだな。一理あるかもしれん」
うなづいた桂を見て、銀時は一安心した。ああ、今夜はこれでやっと眠れる。

「――オイ!おまえらうるせーヨ!!!いい加減にするアル!」 神楽の一声が響いた。


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