坂田家の食卓
炊きたてのご飯と熱いお味噌汁、ひきわり納豆。おかずに鰹のタタキ。目玉焼きと漬物の胡瓜とカブの浅漬け。
いつもよりほんの少し豪華な坂田家の朝食だ。最近は実入りが良かったので料理も品数が多い。

「おい、神楽ァ、目玉焼きには粉砂糖だろ。」

「目玉焼きにはポン酢アルよ」

「そーか、神楽はポン酢派か。酢昆布といいポン酢といい、お前酸っぱいもの好きね」

「チャラついた調味料には興味ないアル」

「ハイハイハイ、どーせ俺はチャラついてますよ」

目玉焼きは2つ焼いてるので調味料は分けてかけることにする。

「おはようございまーす」
新八が出社してくる。
「あ、朝ごはん中でしたか。目玉焼き、美味しそうですね」

「新八は目玉焼きは何かけて食う?」


「僕は醤油です!」
「うわッ、ふつーアル」
「確かに普通だな」
「うるさいよ!醤油の何がいけないんだよ!朝からあんたらに突っ込んでると帰る頃にはバテるからこんぐらいにしとくけど、醤油なめんなよ!!!日本の調味料の基本だぞコルァ」




「そうだぞ!銀時、醤油をなめてはいかん!」

障子を勢いよく開けて登場する。
「うぉおお!?ヅラぁ、てめえどっからわいた!」
「そこの窓から」
「玄関通れよ!」
「すまない、スタンバってたのがたまたま窓の下だったんだ」
「朝からスタンバってんじゃねーよ!ウゼーんだよ!」

「ヅラは目玉焼きは醤油派アルか。さすが伊達に醤油顔じゃないアルな」
「嘘こいてんなよ、ヅラぁ!!!てめーは何もかけない派だろ!」
「よく覚えてたな、銀時。しかし人は変わるものだ。今は醤油派だ」
「けっ!粉砂糖が一番だっつの、このさらさらした甘味が卵とよく合うんだよ」
「味の好みについては否定せん。しかしな、朝から砂糖とは何だ栄養バランスが悪いぞ!」
「バランスって言われてもな」
「だいたいお前は糖分をとりすぎなんだ、塩分もしっかり取らんか!」
「そーだ、そーだ!いーぞぉ、いい機会だからもっと言うアルよ、ヅラ」
神楽が二杯目のご飯をかきこみながら参戦する。

ああ…はじまっちゃったよ。一度始まると長いんだよね、これ。新八はとりあえず空になった食器を片付ける。

「聞くアル、ヅラ!この天パ、朝夕晩必ず味つけに砂糖使うアル、毎度毎度毎度、甘過ぎてやってらんねーアルよ!!!」
「ちょっ、神楽、お前どっちの味方ァァ!?」
「銀時、マジでそのうち糖尿とかメタボになるぞ」
「そもそも銀ちゃんの卵焼き甘いアル、私はしょっぺー卵焼き以外は卵焼きとは認めないアルよ!」
「銀時、好みを人に押し付けるのは良くないぞ、リーダーの感性も大事にしてやれ」
「そーだ、そーだ!」神楽は四杯目をかきこむ。既にご飯以外の皿は空だ。

「何だよ、何なんだよ、さっきからこの会話!まるで娘とお母さんで結託してお父さん苛めてるみたいじゃね???!! ひどくない、二人して! あれっ。てことは、ヅラがお母さんんんん!?俺がお父さんんんん?!えええーイヤイヤイヤイヤ、ナイナイナイ!マジでない、それはない。ない。ないわ〜」
「私が娘ってとこはノーコメントかよ」
「あの、僕は入ってすらいないんだけど」
「ワン!」さっきから黙って横で寝ていた定春も吠えた。仲間に入れろ!と言ってるに違いない。
「俺が銀時のお母さんか。悪くないな、それも」
「いや、ヅラ…それ違うから、お母さんて俺のかーちゃんじゃなくてさ、こいつらのかーちゃんて意味だからね。ついでに俺の奥さんて意味だからね。」
「奥さん!?人妻というやつか!!!」
「そーそー。おまえの好きなひとづま……」
「ちょっとオオオォォォオオ!!!僕が家族に入ってないんですけどおおお!!」
「新八、おまえはとーちゃんと同じく立場の弱い兄貴ね」
「ひとづまか。楽しそうだな…」
「ていうか!! 料理も買い物もしない人は黙っててくんない!毎日メシ作るのメンドイんだぞ、コルァ」
「栄養バランスはお前の健康の為だ、少しずつでいい、変えろ」
「銀ちゃん諦めるアル」
「………………ヤダ」




「食後のお茶そろそろ入れます?」
「入るアル!」
「俺も」
「俺の分も頼む、新八君」
「黙れっつの、ヅラぁ!お前には出がらしで充分だ!てゆうかお前朝から何しに来たんだよ、そんな暇なのか攘夷活動って!党首がそんなんでいいのかよ!!」
「暇じゃない。ヅラでもない。これを届けにな」
桂は背負っていたふろしきの包みをほどく。
「あっ、お土産アルか」
「………………ゼリーだ」
「しかもこれ、お中元の余り物っぽいですね」
「この時期は、全国の同志から菓子やら麺類やら山のように届くんだ。しかし賞味期限もあるしな。食べきれないから持ってきた」

「マジでか!助かるわ〜特にゼリーとかゼリーとかゼリーとか」

神楽は悔しげに舌打ちする。
「銀ちゃんの甘党直すいい機会だったのに」
「直らないハズだよ、身近に冗長する人がいるんだもんな…」




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